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早めの適切な治療で自立した生活が長く送れる
パーキンソン病

パーキンソン病は、脳の神経伝達物質である「ドパミン」が少なくなり、動作が遅くなるなどの運動障害が現れる病気です。「パーキンソン病になると、何年かしたら寝たきりになる」などといわれたこともありましたが、現在は適切な治療によって進行を遅らせ、自立した生活を長く送れるようになってきました。

「ドパミン」という神経伝達物質が減少して起こる

パーキンソン病は、脳の黒質というところでつくられるドパミン(ドーパミンともいう)が減少することによって起こります。ドパミンは脳からの指令を筋肉に伝える役目を担っていることから、その量が減ることによってさまざまな運動障害が起こるようになります。そして、パーキンソン病はゆっくり進行するのが特徴です。

代表的な症状は、
①手足がふるえる……何もせずじっとしているときに小刻みにふるえる
②筋肉がこわばる……筋肉がこわばって動かしにくくなる、表情が乏しくなる
③動作が遅くなる……動作が鈍くなる、歩行時に足が出にくくなる、声が小さくなる
④体のバランスをとりにくくなる……バランスをとりにくくなり転びやすくなる
などで、これらは4大症状と呼ばれます。このうち④は進行してから出てくる症状です。

運動障害以外にも、精神症状(うつ状態、妄想など)、物忘れなど認知症のような症状、感覚の異常(関節痛、手足のしびれ、嗅覚障害など)、睡眠障害(不眠、中途覚醒など)のほか、便秘や排尿障害が起こることもあります。 パーキンソン病は50歳以降に多い病気で患者は年をとるほど増えますが、若い人にもみられます。40歳以下で発症した場合は若年性パーキンソン病と呼ばれます。
パーキンソン病は厚生労働省が指定する難病の一つになっており、症状などの条件を満たせば、医療費の公的な補助が受けられます。

脳神経内科や神経内科で検査・診断を受ける

パーキンソン病を専門とする診療科は、脳神経内科、あるいは神経内科です。手術が必要になったときに担当する脳神経外科でも診てもらえます。パーキンソン病と思われる症状が現れたときはこれらの診療科に受診するか、まずかかりつけ医に相談し、適切な医療機関を紹介してもらってもよいでしょう。

医療機関では、問診で医師が症状や経過、既往歴、服薬の状況、家族歴などを患者に聞き、患者の手足の動きを見てパーキンソン病特有の症状がないか確認します。検査では、血液検査や尿検査などのほかに、下記のような画像検査も行われます。

●MRI(磁気共鳴画像診断)……脳の形態を見たり、脳梗塞や脳腫瘍など、ほかの病気が症状の原因になっていないかを調べたりします。同様の目的でCT検査が行われることもあります。いずれもパーキンソン病では異常はみられません。

●MIBG心筋シンチグラフィ……MIBGという微量の放射線を出す薬剤を投与し、脳の血流がわかるSPECT(単一光子放射断層撮影)で画像撮影します。MIBGは心臓に集まる特徴があり、パーキンソン病では心臓に集まる薬剤が減少するので診断の参考になります。

●DATシンチグラフィ(DATスキャン)……パーキンソン病になると脳内でドパミンの量を調節するドパミントランスポーター(DAT)というたんぱく質が減少します。微量の放射線を出し、DATと結合する薬剤を注射し、SPECTで画像撮影して脳への集まり具合を調べます。集まり具合が少ない場合はパーキンソン病の可能性があります。

上記のほか、パーキンソン病の薬を服用して実際に効果が得られるかどうかをみる検査や、嗅覚検査が行われることもあります。

症状を抑える薬物療法が中心

パーキンソン病では、薬を使って症状をできるだけ抑えることが治療の基本です。不足したドパミンを補うことを目的とした次の2つの薬が代表です。

●レボドパ製剤(Lドパ)……脳内でドパミンに変化し、ドパミンと同様の働きをします。効果の高い薬ですが、長く使っているとウェアリングオフ(薬の作用が早く切れて症状が出る)やジスキネジア(自分の意思とは関係なく体が動いてしまう)が現れることがあります。

●ドパミン受容体作動薬(ドパミンアゴニスト)……脳内のドパミンを受け取る受容体を刺激し、ドパミンの働きを助けます。のみ薬のほか皮膚に貼る貼付薬や自己注射薬もあります。

このほか、レボドパを脳に長くとどまらせて効果を長くするMAO-B(マオビー)阻害薬や、COMT(コムト)阻害薬(Lドパの効く時間を延ばす)、抗コリン薬(神経伝達物質のバランスを整えてレボドパの効果を強める)など、さまざまな薬が用いられます。

かつては「レボドパ製剤はできるだけ遅く使うのがよい」といわれましたが、今はレボドパ製剤の使用も含め、早めに治療を開始するのがよいとされ、患者の年齢や症状、効果の現れ方を確認し、薬の量や組み合わせを工夫しながら薬物治療が行われます。

薬の効果が落ちてきたら手術も検討

ウェアリングオフやジスキネジアが現れるなど、薬だけで症状をコントロールすることが難しくなったときは、手術が検討されます。その1つ、「脳深部刺激療法(DBS)」は、脳の深い部分に電極を、胸の皮下にパルスジェネレーター(刺激発生装置)を埋め込み、リードでつないで脳に持続的に電気刺激を与え、症状を和らげる治療法です。パーキンソン病を完治させる治療ではないため、薬物治療は継続します。

もう1つの「経腸療法」は、体表から胃に穴(胃ろう)を開けてチューブを空腸まで入れ、チューブのもう一方を薬剤(レボドパ)の入ったカセットにつなぎ、レボドパを直接、カセットから空腸に持続して送る治療です。レボドパが吸収されやすいので血中濃度を一定に保ちやすく、安定した効果を得ることが期待できます。

薬物治療とあわせてリハビリテーションを行うことも大切

パーキンソン病と診断されたら、筋力や柔軟性、関節の可動域を保ち、心肺機能を維持するために、早いうちからリハビリテーションを始めることが大切です。リハビリをすることによって薬の効果が高まるともいわれています。ウオーキング、ストレッチ、筋力トレーニングを組み合わせるなど、主治医に相談して患者の症状・状態に合ったリハビリを行います。理学療法ガイドラインでは1日30分、週5日の運動が推奨されています。

パーキンソン病では声が出にくくなる、かすれる、はっきりしなくなるといった症状もあるので、呼吸訓練や発声訓練なども必要になります。大きな声を出して本を読んだり、カラオケで歌ったりするのも訓練になります。

 

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