急におしっこがしたくなってガマンできないほどの尿意切迫感を生じ、たびたびトイレに行きたくなるのが過活動膀胱です。生命に危険をおよぼすことはありませんが、生活の質(QOL)を低下させる、身近で重要な健康問題といえます。
過活動膀胱の主な症状は、①急にガマンできないほど強い尿意がおこる「尿意切迫感」、②排尿回数が多すぎる「頻尿」、③尿意切迫感と同時かその直後に尿がもれる「切迫性尿失禁」の3つです。
過活動膀胱の患者数はわが国では約810万人にのぼると推計されています(日本排尿機能学会)。人に言えずに悩んでいる人たちも含めると、過活動膀胱の人は実際にはもっと多く存在すると考えられます。
膀胱には、腎臓でつくられた尿を一時的にためておく役割があります。たまった尿が膀胱の壁を押し広げ、その刺激が脳に伝わって尿意を感じ、排尿を行うことになります。成人の場合、膀胱には300~500mLの尿をためられ、日中は3~4時間くらいの間隔でトイレに行くのが一般的です。夜は水分の排出を抑えるホルモンが分泌されるため、その間隔は7~8時間と長くなります。しかし、過活動膀胱になると尿がそれほどたまっていないのに尿意を感じ、排尿回数も増えてしまいます。
過活動膀胱の診断は以下の質問票により行うことができます。これは複数の症状を総合的に評価しやすいように策定されています。点数が高くなるほど過活動膀胱の可能性が高くなります。頻尿などの問題で生活に支障をきたしているようなら、お近くの泌尿器医、もしくはかかりつけの内科医に相談してみましょう。
4つの質問に対し、当てはまるものを選びましょう。質問3(尿意切迫感スコア)が2点以上、かつ合計点が3点以上だと過活動膀胱の可能性があります。
過活動膀胱の重症度判定
(日本排尿機能学会「過活動膀胱診療ガイドライン」から一部改変して引用)
過活動膀胱の治療は、膀胱の収縮をおさえる薬などを服用する「薬物療法」と尿意をガマンする訓練をする「行動療法」の併用が基本となります。
薬物療法では主に抗コリン薬などを使用します。排尿するときは、膀胱を収縮させる神経伝達物質である「アセチルコリン」が分泌され、膀胱に伝えられますが、抗コリン薬はこのアセチルコリンの働きを弱めることで、膀胱の異常な収縮をおさえます。
行動療法では、まず水分をとり過ぎないようにして(食事以外の水分は1日1L目安)、利尿作用のあるカフェインやアルコールを控えるなど、生活習慣に気を配ります。さらに以下の「膀胱訓練」や「骨盤底筋体操」を継続することによって、症状の改善が期待できます。
尿をガマンする訓練をし、膀胱に尿をためる力をつけて頻尿を改善させる方法です。
腹圧性尿失禁(お腹に力がかかったときにもれてしまうタイプの尿もれ)の治療法ですが、過活動膀胱にも有効です。