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増加傾向にある大腸がんを 早期発見で完治させる

日本では大腸がんの患者が増加傾向にあり、その数は年間16万人にも上っています。2021年の部位別のがん死亡者数をみると、大腸がんは男性では第2位、女性では第1位となっています。一方で、大腸がんは一般に進行が遅いため、早期発見して適切な治療をすれば完治する可能性が高いがんです。

高齢化や生活習慣などが増加の原因

大腸がんは、大腸に発生するがんで、発生した場所によって結腸がんと直腸がんに分けられます。40代から増え始め、高齢になるほど大腸がんになる人も増えてきます。大腸がんが増加している背景には、人口の高齢化とともに食生活の欧米化があると考えられています。肥満やアルコールの過剰摂取、運動不足や喫煙も発症に関わっている可能性があります。また、遺伝との関連が強いタイプの大腸がんもあります。

大腸がんの早期にはほとんど自覚症状はありません。ある程度進行すると便に血が混じる、便が残っている感じがする、便が細くなる、便秘や下痢を繰り返すなど、便に関連したさまざまな症状がみられるようになります。もしこれらの症状に気づいたら、大腸がんの可能性を考え、早めに専門の医療機関で検査を受けることが大切です。

早期発見のためにまずは便潜血検査

大腸がんは自覚症状が出てからでは進行している可能性が高くなり、大きな手術が必要になったり、命に危険が及ぶ可能性も出てきます。そうならないためにも、早期発見・早期治療が重要です。症状のない早期の段階で発見できれば体に負担の少ない治療で済み、完治することができます。そこで国では、大腸がんの早期発見のため、40歳以上の人を対象に年に1回、便潜血検査による大腸がん検診を受けることを推奨しています。

便潜血検査では、少量の便を採取して専用の容器に入れ、医療機関または検査機関に提出します。がんやポリープがあると大腸内を便が移動する際に組織とこすれて出血を起こすことがあるため、便に血液が混じっていないかを調べます。

便潜血検査は簡単で身体的負担が少ないのがメリットです。ただし、出血を伴わない大腸がんは見落とす可能性があります。また、痔や生理(月経)などによる潜血も陽性と判定してしまうという難点もありますが、便潜血で陽性になったら「きっと痔だろう」などと自己判断せず、精密検査を受けましょう。

精密検査では大腸内視鏡検査が行われる

便潜血検査で陽性になった場合の精密検査として、大腸内視鏡検査が行われます。下剤をのみ大腸を空にしたあと、先端に小さなカメラが付いた細い管(内視鏡)を肛門から挿入して大腸の内側を観察します。検査による痛みを避けたい人には、鎮痛薬などが使われます。

大腸がんの多くはポリープから発生します。大腸ポリープには腫瘍性と非腫瘍性があり、腫瘍性のなかには「がん」と「腺腫」があります。腺腫は発見したときは良性でも、将来的に大きくなり、がん化するケースが少なくありません。そのためポリープが見つかればその場で切除するのが一般的ですが、ポリープが小さければ経過観察することもあります。

一度ポリープが見つかり切除した人は、定期的に大腸内視鏡検査を受けるようすすめられることもあります。

進行の程度に応じて治療法を選択

精密検査で大腸がんが見つかった場合は、がんが大腸の壁のどのくらいの深さまで広がっているのかを示す「深達度」に加えて、リンパ節転移・遠隔転移の有無によって病期(ステージ)が決まります。病期は、がんが粘膜内にとどまっている0期から、肝臓や肺などへの遠隔転移が認められるⅣ期まで、5つに分けられます。

0~Ⅲ期では主にがんを切除できるかどうかを判断し、切除できる場合は内視鏡治療または手術が勧められます。Ⅳ期でもがんの原発巣と遠隔転移巣がともに切除可能であれば手術が勧められますが、原発巣の切除ができない場合は薬物療法がすすめられます。

大腸がんの主な治療法

◎内視鏡治療
内視鏡を使って大腸の内側からがんを切除する方法です。がんが小さく、粘膜下層への広がりがごく浅い場合が対象です。内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などの方法があります。

◎手術(外科治療)
内視鏡治療でがんの切除が難しい場合、メスでおなかを切開し、がんの部分だけではなく、がんが広がっている可能性のある腸管とリンパ節も切除します。

◎腹腔鏡下手術・ロボット支援下手術
腹腔鏡下手術はおなかに4~5カ所、5mm~1cmくらいの穴を開け、カメラの付いた細い管(腹腔鏡)と手術器具を入れてがん病巣やリンパ節を切除するものです。傷が小さい、痛みが少ない、回復が早いなどの利点があります。近年は、腹腔鏡とロボットアームをおなかに挿入し、より正確に、より安全に腹腔鏡下手術を行うロボット支援下手術を行う医療機関も増えています。大腸がんのロボット支援下手術には健康保険が適用されます。

◎薬物療法
薬物療法では、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などが用いられます。これらの薬を単独または組み合わせて、点滴もしくは内服で行います。
切除不能進行がん・再発大腸がんに対する薬物療法……手術によりがんを取りきることが難しい場合や、症状を緩和する目的でも行われます。
大腸がんの薬物治療では、一次治療を始める前に、がんの組織の遺伝子を調べる検査(RAS遺伝子検査、BRAF遺伝子検査、MSI検査)を行い、その結果に応じて治療を検討します。まず一次治療で使用する薬が決められ、その薬の効果が低下してきたら薬を変えて二次治療、続いて三次治療、というように治療を進めていきます。
補助化学療法……手術後の再発を防ぐ目的で行います。細胞障害性抗がん薬を内服または点滴で投与します。

手術と薬物以外では、再発予防や、再発による症状緩和を目的に放射線治療が行われることもあります。

大腸がんを防ぐために、生活習慣のここを改善

大腸がんのリスクを下げるためには「運動」と「食事」が重要です。あわせてアルコールのとり過ぎや喫煙の習慣をやめることにより、予防効果のアップが期待できます。

◎運動……運動は大腸がんのリスクを下げるといわれています。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準」では、18歳から64歳の人は、1日60分間、歩行などの軽い運動と、加えて1週間に60分程度は息がはずみ、汗をかく程度の運動を行うことを推奨しています。65歳以上の人は、強度を問わず、ウォーキングや体操、家事などの身体活動を毎日40分行うことが勧められています。

◎食事……牛肉、豚肉などの赤身の肉、ハム・ソーセージ・ベーコンなどの加工肉は大腸がんのリスクを高めるといわれています。ほどほどの量にとどめましょう。また、腸の健康維持のために、食物繊維の多い野菜類や芋類、豆類、海藻類、きのこ類を積極的にとり、ふだんから腸内環境を整えておきましょう。肥満も大腸がんによる死亡リスクを高めることがわかっています。運動や食事で適正な体重を維持しましょう。

◎飲酒……1日あたりの純アルコール摂取量が23gを超えると大腸がんを発症するリスクが高まるとの研究報告があります。飲み過ぎに注意し、飲酒する際は適量を心がけましょう。

◎喫煙……喫煙は、大腸がんのほか、肺がんや食道がんなど多くのがんの原因になります。喫煙者は禁煙に取り組みましょう。

参考:国立がん研究センター・がん情報サービスHPほか

 

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